うちから車で15分ぐらいの場所に、国蝶オオムラサキの繁殖に取り組む施設がある。
ことしも羽化が始まったと聞き、梅雨の合間に訪ねた。
施設があるのは国道から2.5キロほど広葉樹の山に分け入ったところだ。
オオムラサキの幼虫が好むエノキの林に保護ネットを設け、鳥などの外敵から守るようになっている。
標高約220メートル。うっそうとした林の中は下界よりも気温が2、3度は低い。
羽化は気温が上がった昼過ぎに起きた。
枝にぶら下がった5センチほどのサナギの背中に割れ目が入る。
もぞもぞと身をくゆらせながら、頭を下にした成虫がサナギからずるっと抜け出す。
わずか2分半の生のドラマだ。
脱皮したばかりのオスの成虫は、サナギの抜け殻につかまる。
約5時間、青紫色の美しい羽が広がるのを待つのだ。
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