2012年6月19日火曜日

エノキ林の宝石


うちから車で15分ぐらいの場所に、国蝶オオムラサキの繁殖に取り組む施設がある。
ことしも羽化が始まったと聞き、梅雨の合間に訪ねた。
施設があるのは国道から2.5キロほど広葉樹の山に分け入ったところだ。
オオムラサキの幼虫が好むエノキの林に保護ネットを設け、鳥などの外敵から守るようになっている。
標高約220メートル。うっそうとした林の中は下界よりも気温が2、3度は低い。

羽化は気温が上がった昼過ぎに起きた。
枝にぶら下がった5センチほどのサナギの背中に割れ目が入る。
もぞもぞと身をくゆらせながら、頭を下にした成虫がサナギからずるっと抜け出す。
わずか2分半の生のドラマだ。







脱皮したばかりのオスの成虫は、サナギの抜け殻につかまる。
5時間、青紫色の美しい羽が広がるのを待つのだ。

この時期は青紫色のオスが羽化し、その後、茶色のメスが羽化する。

施設を運営する守る会によると、ことしは羽化数が200匹前後と、昨年の6分の1に減りそうだという。
繁殖を始めて33年目になるが、こんなに減ったのは初めてだとか。
ネットの中の木立も例年なら葉が幼虫に食われ、明るくなっているのだが、ことしはうっそうとしたままだった。
会の人も「原因が分からんのよ」と首をひねっていた。

羽化は7月中旬まで続く。


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