2016年7月27日水曜日

BRM702岩国400キロ その8(完)

PC5、セブンイレブン光市室積新開店。
出発から364キロ地点。
時間は3日の午前7時32分。
梅雨明けしたかのような、青空がまぶしい。
空がまぶしい。


ちなみにPC4からPC5までの距離は59.8キロ。
で、所要時間は4時間3分。
ってことは区間時速は14.8キロ。
前回の区間時速13.2キロをちょっぴり上回っていた。
寝落ちが1回、上りが1回しかなかったのが理由かな。


PC5のクローズは午前8時20分なので、貯金は48分。
ゴールまで残り40キロ。
このペースならなんとか完走できそうだ。
確信が体を満たす。


ただ、自分が進まないことにはゴールは近づかない。
補給を済ませる。
この日は海水浴シーズンを控えて、室積海岸の一斉清掃だったみたい。
コンビニ周辺でも中学生が懸命に道端の草抜きに汗を流していた。
ポンコツオヤジたち(PANAランドナーさん撮影)


それを横目にくたびれるゾンビなポンコツ自転車オヤジたち。
そういえば写真撮ってもらっていたのね。
愛想なくてすんません(^-^;


いつまでも休んではいられない。
いきましょう。


国道188号を東へ、由宇のゴールへとひた走る。
キューシートで79番目中77番目の室積交差点を曲がる。

左へ曲がりま~す

街中でつらいのが信号ストップである。
350キロ以上の距離を重ねてきた足は、生まれたての小鹿のように力が入らず、プルプルと頼りない。
左足をひねって、クリートを外す作業も一苦労だ。
信号にかからないよう願いながら進む。


周囲から家屋が消えてきた。
右手に瀬戸内海が広がる。

ここでも光市民がごみ集めをしていた。
実に気持ちのいい風景だ。


だが、今はそれより大事なことがある。
あと何キロなのか。
あと何キロで着くのか。
Edge520の距離表示を、ひたすらにらむ。


尻が痛い。
左足首も痛い。
あと何キロか。
太陽が高くなってきた。
暑い。


柳井市内に入る。
道路工事があったり、大きな信号があったりといろいろと気を使う。

Edgeさんによると、気温は30度近い。
まだ午前9時前だというのに。
4車線とやたらに広い道は、日を遮るモノもない。
ぎらぎらとした照り返しで、道路が白っぽい。
河口に架かる大きな橋を渡る。
緩やかな上りなのだが、こたえた。



柳井からは海沿いの道をひた走る。
真夏の日差しがまぶしい。
大畠だ。
大畠の港周辺を抜ける微妙な上りがあるのが、いやらしい。
右手に大島大橋を見つつ、進んでいく。
この辺りはたびたび走ったことがあるコース。
でも、こういうしんどいシチュエーションで走ることがあろうとは。




大畠からが結構長い。
このへんの国道181号は、路肩が荒れていて走りにくい。
県西部とは同じ山口県内と思えないほど道が悪いのだ。
交通量も結構多いし、気を遣う。
おなじみの風景を眺めつつ、由宇が近づくのを待つ。

まだか。
まだか。
そして、ようやく出発地点の潮風公園みなとオアシスゆうが見えた。
ようやくだ。
でもここはゴールではない。
もうちょっと進む。
由宇の街へ進む跨線橋を越える。
右手にコンビニが見えた。
道路を渡る。


401.6キロ地点、セブンイレブン山口由宇店だ。
ここがゴールだ。
自転車を停め、店内に入る。
買い物をして、あるものを買う。
レシートをもらう。
7月3日午前9時42分。
ようやくゴールだ。
やった。
ひとまず安心だ。
クローズは27時間なので1時間18分の余裕があったということになる。


でも、ゴール手続きは、出発地点の潮風公園みなとオアシスゆうだ。
そこまでは戻らなくっちゃ。





そしてようやく着いた。
始まりの地に。
そして、こここそが真の終わりの地なのだ。
そう。もう走らなくていいのだ。
これ以上走らなくていい。
すさまじい安堵感が、ボロボロになりはてた身体中を満たす。
喜びの気持ちはない。
ただやり遂げたのだ。
到着です。


受付に入って、手続きを済ませた。
記録は25時間42分。
400キロの完走メダルを購入する。
一番難しいといわれる400キロだが、初挑戦でなんとか完走できた。
よかった。
休み取った甲斐があった。
笑う、ボロボロの二人(テラダさん撮影)


なんか、実にいい顔で笑ってますよね。
確実にネジをどこかに落としてきた表情かと。


受付の前でポーズ!
走りぬいたよ。二人で。なんとか。
やったっす!

やったど~~


ケーキさんありがとう。
そして、おめでとう。
互いにやりぬいたね。
そして祝いのノンアルを。
これがゴールのコンビニでの買い物だったのだ。
乾杯!
乾杯!


終わった。
400キロの旅は終わった。
でも、その時は喜びの感情はなかった。
苦しみからようやく解放されたという安堵感に支配されていた。
ただ、ただ安心していた。
もうペダルを回さなくて済むんだ。
ケーキさんの車にウノさんを積み込む。
わしはシャワーを浴びに行ったが、ケーキさんはその元気もないみたい。
さ、帰りましょう。
わしらの旅は終わったのだ。


長い長い400キロの旅。
主催したAJ広島のスタッフの皆様に感謝。
素敵な映像を撮っていただいた撮影陣もありがとう。
一緒に走った参加者のみなさんにもありがとう。
そして26時間近くもわたる旅路を共にしてくれたケーキさん、ありがとう。
互いに支えあったからこその完走だと思っている。
深謝。
翌日、二人とも無事に出勤し、仕事をこなしたことも書き添えておく。
社会人にとっては、翌日の仕事終わりまでがブルべだと思うから。


走り終えてから24日が過ぎた。
経験したことのない400キロという距離は体にも経験したことのないダメージを残した。
左手の小指と薬指のしびれだ。
今は徐々に引きつつある。
貯まった疲れからか、今月中旬には軽いぎっくり腰にもなってしまった。
ここ数日でようやく元に戻ってきたところだ。
あれほど痛かった尻は数日で治った。
左足首の痛みも数日でなくなった。


身体が回復してくると、心も回復してくる。
次の旅への意欲も徐々に湧いてきた。


さあ、次はどこへ走ろうか。

おわり。

2016年7月24日日曜日

BRM702岩国400キロ その7

午前3時29分。
304.9キロ地点のPC4ローソン徳地堀店。
ここのクローズ時間は午前4時20分。
50分しか貯金がない(;_;
PCごとに貯金を意識しながら走ってきたけど、ついに1時間を切った。
PC3美祢での貯金が1時間22分だったので、さらに状況的には追い詰められていることになる。
だが、まだ貯金はある。

ちなみにこの区間の平均時速は13.2キロという(^-^;
夜になるにつれて遅さが加速している。
峠を二つ越える厳しいルートだったしね。

どなたかのバックショット。お疲れですのう。

でもその時は、そんなことも考える余裕はゼロ。
たちまち補給する。
何を買ったかなど全く覚えていないのだけど。
抜け殻のわしたち。
抜け殻のケーキさん。


この時間、なぜか撮影隊のみなさんがPCにいらっしゃった。
弱者救済の意味もあるのだろう。
AJ広島の動画にしっかり映っていた。
何度もいうが、この動画まことに素晴らしい。
是が非でもご覧あれ。

再び走り出す。
ここからは来た道を戻る。

次第に夜が明けてくる。
空が明るくなってくる。
でも、わしらは眠くなってくる。

ケーキさんもこの間、意識朦朧として走っていたらしい。
この場にいないken2さんたちに「わしと替われ!」と毒づきながら、わしの背中を追っていたという。
すんませんな。こんな愚行につき合わせて(^'^)

まだ島地川ダムへの上りが残っている。
徳地からダムへのとっつきまでが結構、距離があるのだ。
だんだん眠くなってきた。
ケーキさんは島地川ダム付近に休めるところがあるって言ってたけど。
あかん、もうダメ。

右手にバス停があった。
この地では珍しい。
ここで休むこと決定!

払暁の道。
たちまちバス停に寝転ぶ。
ケーキさんがベンチに。
わしは面倒なので地面に。
タイマーを仕掛ける。
おやすみなさい。

寝ているのか寝ていないのか。
ケーキさんのいびきが聞こえる。
心拍が次第にゆっくりになっていく。
わしもいびきをかいているのがわかる。
意識が裏返る。

起きる。
さあ行こう。
ケーキさんによると、ほかの参加者が同じ場所で休んでいたらしいけど、分からなかった。
さよならバス停ホテル。
どんな高級ホテルよりも素晴らしい!

アジサイの咲き誇る山里の道。
そこを見ながらダムへの上り坂を行く。


あまりきつい斜度がなかったのが幸いだ。
心拍が上がらないように注意して、足にも負担をかけないように上る。
山に霧がかかる。
ダム来ました。

意識ありますか~~。

島地川ダムを通過する。
しばしの上りを耐えると、周南市の須々万地区だ。
ここからはほぼ高原地帯。
大きなアップダウンはない。

進む。
進む。


夜が明けた。
夜を越した。

まっすぐな道が来た。
うわ、むっちゃ気持ちいい。

真っすぐです。

叫んでいた。

体はボロボロなのに、心は喜んでいる。
思わず叫んでいたよ。

ケーキさんも頑張っております!

進む。
前にほかのバイクが見えた。
前に参加者さん発見!

元気ならテンションが上がって追いつこうとするところだけど、ここはもう無理。
追いつけない。追いつかない。


小さな丘を越え、下松へと下っていく。
途中でジャケットを着るケーキさん。
下松へ下る


ダム湖がまた見える。
米泉湖っていうらしい。
朝の湖はさわやかで。

でも、止まる暇はないわけで。

ランニングする人たちもいて、さわやかな雰囲気だ。
わしたちはそんなことも関係なく、進むだけだったけど。

坂を下って、下松の街に入る。
立体交差やら、でっかい道路やら、街ですわ。
早朝の街を東へと進む。
下松の街を行く。

日曜の朝。
交通量はそれほどではない。
コンビナートで有名な場所だけに、道路の右手にはいろいろな工場が現れる。

工場がなくなった。
下松から光市へと入る。
平坦路。そんなに速いペースで走っているつもりはないのだが、ケーキさんが遅れ始める。
わしもケーキさんも限界ギリギリなのだ。
限界MAX!

このちょっと前から尻が痛い。
左足首も痛い。
さすが300キロを越すと、そのダメージは容赦ないな。
時折、無意味にダンシングを交ぜて走る。
そうしないとケツが耐えきれない。

午前7時を過ぎると、陽も上がってくる。
じわじわと気温も上がってくる。

まだか、まだか。
ようやく来た。
PC5、セブンイレブン光市室積新開店である。
364キロ地点。
買い物をしてレシートをもらう。
3日午前7時32分。
ようやくここまで来た。

空がまぶしい。

つづく。