ようやく折り返し点の角島灯台に着いたポンコツオヤジ二人組。
なんとか12時間以内、陽の光が残っているうちに200キロを走破できた。
後は頑張って頑張って由宇に戻るのだ。
トイレに行って、用を足したり、顔を洗ったりする。
自販機で飲み物を買ってボトルに補充する。
これから当分、山岳はないはずだけど。
角島灯台よ、さらばだ |
ちなみにPC2から角島灯台の距離は45キロ。
わしらはここを2時間48分で走り抜けた。
時速にして約16.2キロ。
前の区間よりも早かったが、誇れるスピードではない。
でも、その時はそんなことを考える余裕もなく、ただただペダルを回すだけ。
距離はプラス15キロで(^_^;) |
ケーキさん乙 |
時間は午後8時過ぎ。
400キロの制限時間は27時間。
あと15時間かけて200キロを走り切ればいい。
そう考えると少しは気が楽になった。
意を決して走り出す。
ウノさんのリアライトをすべて点灯する。
ここからは夜の道だ。
さあ行くか。
角島の道を引き返す。
ケーキさんのライトが点滅していたので、常時点灯にしてもらう。
パカパカしていると、気が散るというか、催眠効果があるというか、目ざわりというか。
あたりはどんどん暗くなる。
これからは二つのフロントライトが頼りだ。
角島大橋に再び差し掛かる。
右手前のホテル西長門リゾートの光が明るい。
ヒョオオー。
欄干を通りすぎた右手からの風が唸り声を上げる。
寂しげな音だ。
そういえば先刻会話を交わしたPANAランドナー氏が言ってたな。
「昨年の角島は秋に走った。ここに来たときは真っ暗で」と。
想像するだに寒くて寂しい。
それに比べれば、ややましか、
唸り声を上げ続ける橋を後にして、ようやく本土に戻る。
先ほど見た、角島に沈む夕日を楽しめる系のリア充レストランには、すでにチャリ属がいる風ではない。
速いお方だけの特権だよなあ。
貧脚のわしら二人は目もくれずにのろのろと走り続けるだけだ。
日暮れてきた道をとぼとぼと走る。
特牛(こっとい)から、海沿いの国道191号と別れを告げ、内陸に向かう国道435号へと進む。
あたりはすっかり真っ暗。
そこを淡々と進む、わしら自転車ゾンビ。
次のPCである美祢へ向け、黙々と走るしかない。
光が踊る。 |
風が吹き抜ける。
雑木林がざわめく。
何かが落ちてガサガサと音を立てる。
あたりに町の光はない。
ときどき対向車が通り過ぎるだけ。
空を見上げる。
真っ暗だ。
いや、雲間に星が見える。
きれいな星空だ。
南の星空か?
星々の光が集まっている。
なんていう星座なのだろう。
左手を見る。
雲が時折、光っている。
雷ではない。
あれは風力発電の航空警告灯だな。
結構明るいものだ。
一定の間隔を置いて、雲を照らし続けている。
ちょっと前から足の感覚が変だ。
「おれはもうつる」って言っている。
つられたら困るので、だましだまし、足に負担をかけないようにぺダリングする。
でも、もう限界だ。
自販機とか、切りのええところで停車しようと思っていいたのだけど、いつまで進んでも山の中。
ありゃしねえ。
ビキッ!
とうとうその時が来た。
つり神様が降臨なされた。
212キロ地点。
足を止める。
いずことも知れぬ山道だが、一休みするしかない。
クリートを外すのが一苦労だ。
川沿いなのか、ホタルがふらふらと舞っている。
薬を飲んだり、おむすびを食べたりして一息入れる。
ケーキさんはiPhoneの充電に余念がない。
闇の中の男 |
エイリアンなライト |
ドリンクでのどを潤す。
そろそろ少なくなってきたので、次に自販機があったら買わないと。
10分ほど休んで走り出す。
なんとか走れる。
上りはノロノロ。
下りも飛ばせない。
道は真っ暗。
いつまで走っても自販機が見当たらない。
街中なら、ぐるりと見回せばすぐに見つかるのに。
まだか。
まだか。
まだですか~~~!(怒)
・・・・・・。
10キロ走って、道端を照らす救いの光が現出した。
ようやく自販機!
この光がありがたい。蛾の気持ちがわかる |
なんと30分以上もかかってしまった。
恐るべし山口県。
恐るべし国道435号。
時間は午後9時半。
ドリンクを注ぎ足し、再びペダルを回す。
また何もない道だ。
感情を切り離し、機械になって淡々と走る。
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
ちょっぴり家の灯りが増えてきた。
どうやら下関市豊田町西市というところらしい。
さっきからずっと下関市を走っているな。
交差点を曲がり、工事現場を過ぎ、高架下を右折する。
側道のようなところを走り、広い2車線道路に出る。
どうやら国道435号のバイパスらしいが、必要なのかバイパス。こんな場所に。
日中なら、はるか向こうを見渡せるバイパスはやる気をそがれるものだが、夜なのであんまり関係ない。
ただただ、機械になって(以下略)
・・・・
・・・・
・・・・
左手の丘に団地らしき灯りが見える。
ん、あれは美祢市が誘致した国内初の民活刑務所だ。
売れなかった工業団地をなんとかしようと、誘致したんだったよな。
昔、仕事で訪れたことあったよなあ。
入口の交差点近くには、赤ちょうちんが。
なるほど、施設で働く人がいるんだから、そういうニーズもあるよね~。
なんてことを考えながら、ノロノロと坂を上っていく。
小さな峠を越える。
そろそろ美祢の街が近いはずなんだけどなあ。
街の灯りが目立ち始めた。
工場らしき灯りも。
立体交差を通って、市内に下りる。
ようやく美祢市中心部に着いた。
PC3が近づいてきた。
だが、PCのあるコンビニは美祢ICのそば。
東の街外れにあったはずだから、まだ結構遠い。
ケーキさんも疲れているのだろう。
早く休みたいのだろう。
「コンビニまだですかね」と繰り返している。
宇部興産のセメント工場を左手に見ながら、市街地を抜ける。
ちょっと街の灯りが減ったころ、行く手にローソンの看板が。
「ようやく休める」
安堵する抜け殻オヤジたち。
午後11時30分、252キロ地点のローソン美祢インター店に到着した。
深夜のコンビニ。ようやく美祢だ |
つづく
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