午前4時25分。
333.95キロ地点のPC5、ローソン仁淀川町大崎店に到着した。
締め切りは午前5時16分なので、貯金は49分。
休んだのでしょうがないとはいえ、厳しくなってきた。
ようやく到着 |
店舗前にはランドヌール、ランドヌーズが一服している。
お疲れさまです。
ここまで走ってきたみんな。
さすがです。
ランドヌーズさんはわしらを途中追い抜いたらしく、「スーパーに寄られていましたよね~」なんて話を。
なんでも寄り道して早明浦ダムのダムカードをもらってきたとか。すごいなあ。
キューシートによると、ここから先は店舗が極端に減るという。
そう。いよいよヤマ場に入る。
文字通り山場である。
これからのコースね。
次のPC6は約100キロ先の430キロ地点にある。
愛媛県久万高原町だ。
午前11時40分が締め切りだ。
今からなら約7時間かけて約100キロ進めばいい。
平均時速14.3キロといったところ。
ただし、その間は山岳地帯。
コース図によると、700メートル級、500メートル級、600メートル級の三つの峠が待ち構えている。
実に厳しい。
時速15キロメートルのブルベスピードなら間に合うのだけど、山では速度落ちるしなあ。
着実に進むしかないわな。
PC間の距離が長いので、取り戻せるかもしれんし。
よっこらしょ。かがむのも一苦労ですわ |
午前4時50分頃に走り出す。
ちょうど出ようとした時に、AJ広島の新副代表となった大先生がやってきた。
あれ?えらいゆっくり。
どうやら高知で投宿して仮眠を取っていたらしい。
すごいな。余裕だ。
わしもかくありたい。
では行きますか。
国道33号を仁淀川の上流に向かって進む。
7キロほど走ると国道439号との分かれがある。
普通に33号を西へ走ると楽なのだけど、われわれのコースはあえて南下する439号へと向かう。
小雨が降り出した。
そこまでひどい雨ではないが、路面が濡れてきたのがいただけない。
ストクルは羽織っているが、レインパンツをはくほどではない。
橋を渡って、いよいよ酷道ヨサクである。
ただ今のところ道はいい。
じわじわとした上りが続く。
だんだん夜が明けて、周囲が明るくなってきた。
集落は川沿いの斜面にへばりつくようにある。
よくこんなところに家を建てたものだとつくづく感心する。
川の落差が増してきた。
道の斜度もじわじわと上がっていく。
第一の峠が矢筈トンネル。
約750メートル地点にあるので、PC5から約600メートル以上上る。
なかなかの坂だ。
ヨサクさんはきっちり2車線あって、非常に走りやすい。
酷道でなく国道認定。
これなら問題ない。
時折、トンネルを抜ける。
ケーキさんが眠気を訴えている。
眠気は事故のもと。
いい場所があったら休みますか。
トンネルとかでもいいですね~。
と、思っていたら、道が狭くなってきた。
え?
じわじわときつい坂になる。
え?
eTrexを見ると、九十九折の坂が続いている。
え?
休めるとこなぞない。
え?
ケーキさんには申し訳ないが行くところまで行くしかない。
しょうがない。
午前6時を過ぎた。
時速10キロ以下でのたのたと坂を這いずりあがる。
高度が上がるにつれ、気温は10度以下に下がっているのだが、寒さは感じない。
それより、しんどい。
ひたすらしんどい。
ぐにゃぐにゃの道(^-^; |
こんな山奥でも民家はある。
畑もある。
だけども休めるような場所は一切ない。
小雨がしとしとと降っているので、道は濡れたまま。
ほんまもんの坂に差し掛かると、ストクルを脱がないと暑くてたまらない。
坂は終わらない。
進行方向を仰ぎ見る。
はるか急斜面の上に道が走っている。
そうか。あそこまで上らんといけんのじゃ。
まじか。
挫けそうになる心を自ら支える。
とはいうもののしんどいものはしんどい。
ケーキさん少し休みませんか。
坂の途中だけど止まる。
補給用のお菓子を口にする。
ドライフルーツとナッツの組み合わせ、いわゆるトレイルミックスってやつね。
モンベルのフロントバッグに投げ込んでいたむすびも食べる。
女性の参加者がするすると抜いていった。
すごいな。
副代表も脚をくるくる回しながら抜いていった。
すごいな。
それぞれしんどいのかもしれないけど、わしたちには楽そうに見える。
さ、もうひと踏ん張りしましょう。
針葉樹林の中を通る九十九折の道をひたすら上る。
ったく、いつ終わるんだ?
空がちょっぴり近づいてきたのが救いだけど。
そして午前7時前。
ようやくピークのトンネルが見えた。
見えた! |
矢筈トンネルである。
国道439号、たしかに酷道ヨサクでしたわ。 |
歩道もない、昭和クオリティのトンネルなので、中で休めるはずもない。
なのでしょうがなく進む。
トンネルの出口でストクルを羽織る。
しばらくは下り坂だからだ。
キューシートによると、工事中の場所もあり、走りにくいとか。
走り出す。
道は相変わらず狭いまま。
空は相変わらず曇り空。
山には霧がかかっている。
スピードが出せない。
慎重に下るしかない。
工事中の区間に差し掛かる。
ダート区間もある。
谷筋の道を、ひたすら我慢しながら下る。
折角の下りなのに、速度を稼げない。
出せて時速30キロ。
忍耐の時間だ。
山の深い四国は下り坂が鬼門だ。
ようやく道が2車線に広がった。
少し気が楽になる。
ヨサクはまさに酷道の二つ名にふさわしい厳しさであった。
与作は木を切るが、ヨサクは気を折る。
へいへいほ~である。
ボロボロである。
と、後ろを走るケーキさんの様子が変だ。
危うく寝落ちしそうになったらしい。
これは危険だ。
休みを先延ばしにしていたツケだ。
一刻も早く休める場所を探さないと。
と、道端にこの辺の集落の農産物集荷ポイントらしい小屋があった。
軒先はかろうじて濡れてなさそう。
ともかく休みましょう。
腰を下ろす。
気を失うケーキさん。
気を失う人がいる。 |
わしも目をつぶって休む。
暗転。
10分たたぬうちに再起動。
少しは眠気が飛んでくれたか。
走り出す。
標高370メートルまで約400メートル下り、再び上りに差し掛かる。
標高約570メートル地点にある風早トンネルへの上りだ。
ここへの上りは思ったほどではなかった。
小雨が降っていたので、ストクルを羽織ったまま。
が、上りの途中で暑くなってきて、ストクルを脱いだのだけど、まもなくトンネルの入り口がやってきたのだった。
風早トンネルさん |
ストクルを羽織って坂を下る。
脱いだり着たりせわしいない。 |
午前8時31分、383キロ地点。
梼原の通過チェックに到着した。
郵便局の前で証拠写真をパチリ。
郵便局なう。 |
この檮原という町、どうやらまちづくりに力を入れているようで、非常に雰囲気がいいらしい。
ゆっくり見ている暇は当然ないので、先へ進む。
国道440号線は2車線の整備された道路。
これを次のピークである地芳トンネルまで、10キロ以上上っていく。
歩道が広い。
カタツムリのようなオヤジ二人は歩道をゆっくりと進んでいく。
脚をくるくる回して、ゆっくりと。ゆっくりと。
左手に店舗がある。
どうやらうどん屋さんらしく、ランドヌールのバイクが止まっていた。
んが、わしらはわき目もふらず、進み続けた。
そして、ようやく三つ目のピーク、地芳トンネルにたどり着いたのだった。
ガーミン読みで標高約610メートルといったところ。
そしてEDGEでの積算距離が400キロに達した。
ようやく道程の3分の2を消化したのだった。
あと200キロ。
時刻は午前9時半。
次のPCまで約30キロ。
締切まで約2時間。
ブルべスピードなら間に合う。
トンネルは高知県と愛媛県の県境をまたいでいる。
比較的新しめなので、左側には大きめの歩道がついている。
車道もゆとりがあるつくりなのだが、大事を取り歩道を行くことにする。
トンネル内の照明が明るいのも助かる。
ただ、時折走ってくるバイク部隊の排気音がものすごい。
トンネル内に反響して、ゴゴゴゴとジョジョ顔負けの効果音でうなりあげる。
歩道を慎重に進む。
当初はゆるやかな上りだったが、途中から下りになってきた。
車の切れ目を見計らって、ウノさんを止め、車道に降ろす。
車道との段差がけっこうあるので、よいしょって感じである。
走り出す。快調快調♪
ケーキさんは歩道を行く。
トンネルの中ほどで愛媛県に入った。
左手の歩道の幅が狭くなった!
え、なんで?
同じトンネルなのに、愛媛県と高知県側で設計が違うの?
愛媛の方が予算なかったのか?
てなことを考えていると、歩道の広さはまた元に戻った。
でも、愛媛側の歩道のほうが全体的に走りにくそうだったなあ。
トンネルを抜けた。
ここから今回のコースで、もっともしんどいダウンヒルが始まるのだった。
眼前に広がる愛媛県の山々。
天候は以前、曇り時々雨って感じ。
路面もウエット基調だった気がする。
谷は深い。
道は山肌をへばりつくように、うねりながら下っていく。
ブレーキは常に軽く握って、シューをリムに当てている状態。
リムが濡れていると、制動力が低下するから。
この区間、申し訳ないほどに写真がない。撮る余裕がない。
濡れた路面での果てしなく思えるダウンヒル。
広島県ブランドのミニベロ「NAGI」に乗るランドヌールさんと足が合う。
3人一緒になって、山道を走っていた気がする。
409.4キロ地点、標高550メートル。
ここから標高差250メートルのダウンヒルが始まった。
わしはここからの12分間、まったくペダルを回していない。
重力に身を任せているだけである。
深い谷だ。
はるか下に集落が見える。
あそこまで下るのか。
トンネルに入る。
斜度は5~6%あったと思う。
それがトンネルの中でゆるやかにカーブしている。
時折、車が追い抜いていく。
気を張らないと。
時速は20~30キロぐらいで決して速くはない。
でも、気を遣う。
細心の注意を払って、下っていく。
二つ目のトンネルを抜けた。
わずか6キロで300メートルまで下る。
疲れた。
ブレーキを握る手がそう言っている。
ここの下りは本当にしんどかった。
下りはミスが許されない。
ずっと気を張っている。
下るぐらいなら、坂をずっと上ったほうが楽だ。
そんなことを思ったりもした。
415キロ地点、標高290メートルまで下った。
国道33号に合流する。
時刻は午前10時6分。
PC6まで20キロだ。
ここから先は緩やかな上りが続くはず。
締め切りまで約1時間半。
時速20キロをキープすれば30分ほど余裕を残して間に合うはずだ。
しかし何があるかわからない。
ケーキさんにここからが正念場であることを伝える。
できるだけ時速20キロを保って走ろう。
そうすれば間に合う。
ここが頑張りどころだ。
面河川沿いの緩やかな上り。
時速20キロ前後で進んでいく。
気が付かなかったけど、この北上する区間、追い風が吹いていたらしい。
だからペダルが軽かったんだ。
逆風はすぐ分かるけど、順風は案外分からないもの。
人生もそんなもんかな。
後ろを振り向く。
ケーキさんが離れそうになっている。
ペダルを緩める。
頑張ろう。
頑張ろう。
そして谷間が終わった。
空が広くなった。
久万高原町の街に入ったようだ。
右手にコンビニが見えた。
ローソンだ。
着いた。
午前11時12分。
430キロ地点、PC7のサークルK久万大谷店。
締め切りの11時40分まで、貯金はわずか28分。
でも間に合った。
やり遂げたよ。
つづく。
0 件のコメント:
コメントを投稿