492キロ地点、PC7ローソン菊間町店だ。
通過時刻は午後3時32分。
締め切りの3時48分まで、わずか16分。
ギリギリだが間に合った。
まだ旅を続けられる。
着いた時にはまだほかのランドヌールがいたのだけど、ざるそばを食べ終わる頃には、わしたちだけになった。
走り出す。
この時点で午後3時50分。
ついに貯金はなくなった。
退路は断たれた。
だが、時速15キロのブルべペースで考えた場合だ。
残りの100キロちょっとは、ほぼ平坦。
遅くても時速20キロ前後で走れば、ゴール時刻に間に合うはずだ。
大丈夫。間に合う。
ケーキさんは貯金ゼロという事態に相当動揺していたようだ。
だが、ここであきらめても三原まで戻ることは変わらない。
ならば前に進むしかないではないか。
ペダルを回すしかないではないか。
あ、今回のルートね。
国道196号を再び走り始める。
できれば時速20キロ以上で進みたいのだが、ケーキさんのペースが上がらない。
相当参っているようだ。
OK、なら時速20キロで行きましょう。
このペースなら付いてこれますね。
しんどいだろうが、ここは頑張ってもらわんと。
今思えば、この時のケーキさん、昨年のわしの初600の時と全く同じだった。
あの時のわしは最後の100キロ、ほぼ20キロぐらいしか出せなかった。
脚が完全に売り切れていたのだ。
ガチオ君に「時速20キロなら間に合います」と励ましてもらいながら、走ったのだった。
ケーキさんは去年のわしだったのだ。
脚をゆるめる。
時速20キロの定速走行を心掛ける。付かず離れず。
今治までの約30分間、ほぼ一定の速度を保って走っていた。
我慢の時間。
だがおかげで今治に着く前には15分ぐらいの貯金ができた。
おおっと、眠気が襲ってきた。
思い切って休みましょう!
公園が見えた。
ベンチもある。
10分、休みましょう。
人は簡単に気を失える |
横になる。
意識が飛ぶ。
・・・・
・・・・
10分のアラームが鳴る前に目が覚めた。
すっきりした。
休みすぎると身体が固まる。
休みはほどほどにね。
再び走り出す。
今治だ。
コンビニがあった。
ケーキさんが手洗いに行くというので止まる。
正直、コンビニストップはしたくなかったがやむを得ない。
待つ時間が正直もどかしかった。
今治らしく、自転車スタンドを完備したサークルKだったかな。
走り出す。
来島海峡大橋へのアプローチが始まる。
おお、ようやく戻ってきたよ。しまなみ海道に。
来島海峡大橋来た! |
午後5時。
ゴールまであと6時間。
積算距離は515キロ。
誤差を省けば残り90キロ。
時速15キロなら間に合う。
トラブルさえなければだが。
太陽が高度を下げてきた。
日差しが柔らかくなる。
瀬戸内海がまぶしく光る。
日が落ちてきた |
夕方だけど、多くの自転車や歩行者とすれ違う。
しまなみ海道の橋の中で、来島海峡大橋はもっとも四国寄りだからね。
今から今治へ向かうか、戻るかなのだろう。
わしたちはその流れに逆らうようにして、70キロ先の尾道を目指す。
長いのう |
来島海峡大橋を渡って大島へ。
島を横断するので、結構疲れる。
往路では感じなかった坂も、今はしっかりと感じ取れる。
伯方・大島大橋が近づいてきた。
午後6時を過ぎた。
橋を渡る。
夕暮れの風景を撮影する姿も。
夕暮れはフォトジェニックだよね |
伯方島に渡る。
しまなみ海道はずいぶんと渋滞しているようだ。
渋滞20キロ!マジか |
大三島橋を渡る。
大三島橋を渡る |
日没か。
多々羅大橋の手前で一息入れる。
補給食を食べる。
橋の上に車が渋滞している |
橋の上は大渋滞で、ヘッドライトやリアライトの明かりが列のように連なっている。
こんなしまなみ海道初めて見た。
さすがGWだ。
ウノさんもお疲れ |
多々羅大橋を渡る。
生口島に入った。
あたりが薄暗くなってきた。
多々羅大橋さらば |
2回目のナイトライドだ。
さすがにもうサイクリストの姿もほぼ消えた。
一日で往復するガチ勢が時折いるが、数えるほどだ。
日が完全に落ちた。真っ暗だ。
しまなみ自慢の海沿いの風光明媚なコースもこうなると、単なる周囲が見えない田舎道でしかない。
進むしかない。
ケーキさんの体調が戻ってきたようだ。
日が沈んで気温が低くなってきたからかな。
巡航速度も若干上がる。
EDGEさんの機能に仮想トレーナーというものがある。
わしはその仮想トレーナーさんを時速15キロのペースで走る人として設定している。
ブルべのギリギリ隊の隊長さんね。
隊長と比べて、どれだけ速く走っているかで貯金が分かるというわけだ。
その機能で確認したが、一時はゼロになったリードも、どうやら30分程度まで復活したようだ。
このペースを保てば、なんとかなりそうだ。
生口島から生口橋を渡り、因島へ。
因島の丘を越えたところにあるコンビニに寄る。
ケーキさんは大丈夫そうだったが、わしが補給切れでハンガーノックになりそうだったからだ。
炭水化物を補給すると、少し元気になる。
走る意欲がわく。
プラス思考になる。
逆にエネルギーが足りていないと、マイナス思考になり、否定的なことばかり考えるようになる。
人間ってつくづく現金なものだと思う。
5分ちょっと休んで走り出す。
因島大橋を渡り、向島へ。
向島の町を通り過ぎる。
午後9時を過ぎている。
丘を登って、新尾道大橋にアプローチする。
新尾道大橋は、自転車向きじゃないので緊張する。
ようやく本州に戻ってきた。
残り約20キロ。
午後9時20分。
時速20キロペースで走れているので、トラブルがない限り大丈夫だろう。
9時半、尾道駅の前を通過する。
尾道駅前通過! |
あとわずかだ。
もう少しで600キロの旅が終わる。
身体は疲れているのに、心がはやる。
ペダルを回す脚に力が入る。
平均時速のペースがちょっとだけ上がる。
尾道から三原へ。
旧2号線は路肩の舗装が悪くて走りにくい。
だが、ウノさんとのシンクロ率が高まっているわしにとって問題ではない。
わしがウノさんに乗っているのか、わしがウノさんに乗らされているのか。
ウノさんとのかつてない一体感を感じている。
路肩の白線の上を狙って走る。
少しでもずれたら荒れた路面が待ち構えている。
でもウノさんと一体になった、わしにとってはどうということはない。
三原港前を過ぎる。
左手に入り、三原の街中を進む。
この辺で、ミニベロのナギさんと一緒になった。
今回の道程でも何回か一緒になりましたね。
ミニベロで600を走り切るなんてホンマすごい。
真正のヘンタイさんだろう。尊敬する。
ナギさんとつかず離れず。
沼田川を越える。
左折する。
おおおお。
何度か通った須波へのウイニングロード。
それを今走っている。
ここまでくると、もうケーキさん大丈夫ですよね。
自らのことしか考えないエゴイストが、最後の最後に顔を出す。
後ろのことなんか考えずに脚を回す。
ああ、なんて楽しいんだ。
走るって、なんて楽しくて苦しいんだ。
でも、もうすぐ。
もうすぐ、この夢の時間も終わる。
旅は終わる。
右手にローソンが見えた。
ああ、旅が終わる。
ケーキさんとともにコンビニに滑り込む。
いつものアレを買う。
そして会計。
レシートに打刻された時刻は、4日午後10時27分。
終わった。
600キロの長い長い旅が。
キューシートでの距離は602.66キロ。
EDGE520Jが示したのは607.6キロ。
締め切り時間まで33分。
まさにギリギリである。
だが成し遂げた。
やり遂げた。
任務遂行。
ケーキさんと先ほど買ったノンアルで乾杯する。
く~~~~~~~~~っ。うまい。
ケーキさんと乾杯! |
これぞ、自己満足の味だ。
最高の自己満足。
そしてこの個人的な自己満足を、世界的なサイクリスト団体が「よう走ったのう」と認定してくれるのである。
なんとうれしいことか。
なんとありがたいことか。
ローソンの前には一足先に到着したみなさんが談笑している。
わしらも仲間入りして、ひとしきり会話に花が咲く。
ああ、至福のひと時だ。
福岡からいらしたランドヌーズさんは三原に宿泊し、「明日は大久野島へ行ってウサギを見るんだよ」とおっしゃっている。元気やねえ。
明日も「なんちゃって1200」の後半、BRM505広島 須波・日本海600kmに出走される方もいらっしゃるのだろう。
ちなみにわしたちは明日はともに仕事。ははは。
あとやるべきことはブルべカードを記入して、ポストに投函するだけ。
ま、明日やりますか。
名残惜しいが、みなさんに別れを告げ、駐車場に戻る。
片付けて帰路に付いた。
本当に長くてしんどい600キロだった。
何度も何度もダメかと思った。
でも何とか間に合った。
諦めなくてよかった。
走り続けてよかった。
600キロは昨年のBRM902以来、2回目の完走である。
前回はガチオ君に導いてもらった600キロだった。
今回はケーキさんと一緒に、自分たちの脚で切り開いた600キロだった。
600キロを走り抜いたことには変わりないが、一つ前進できたような気がする。
そう思うことにしよう。
一緒に走ったケーキさん、お疲れさまでした。
そして毎度毎度付き合っていただき、ありがとう。
一人ではない心強さを感じた。
主催のAJ広島のみなさまにも感謝です。
「なんちゃって1200」は当分無理そうですが、四国のハードな山々の一端を堪能することができました。ありがとう。
ちなみにAJ広島のリザルトによると出走した46人中40人が完走。
最速タイムは驚きの25時間17分だそうな。
わしの400より速いよ。
わしの認定タイムは39時間27分。
正真正銘、ギリギリ隊の一員だった。
そして次の旅は、あす6月10日午前8時朝出発の「BRM610広島 岩国・角島400キロ 角島、ヤッパいいよね。 どうか晴れますように!!」だ。
日曜日の天候が極めて心配なのですが、こればっかりは準備を整えて臨むしかない。
祈るしかない。
どうか晴れますように。
おわり。
0 件のコメント:
コメントを投稿