2017年9月9日土曜日

熊との遭遇

ある日、森の中、熊に出遭った。


人生で初めて野生の熊を目撃した。
8月31日のことだ。
場所は戸河内から恐羅漢山に抜ける内黒峠。
西中国山地のど真ん中だ。
標高1000メートル近い広島県内有数の峠である。
そこで遭ったのだった。


久しぶりの休み。
折角なら涼しい山沿いを走りたい。
午後イチに自宅から車で出て、戸河内の道の駅に車をデポ。
2時半から走り始めた。


今回の目的地は内黒峠経由の恐羅漢山。
その後は、横川川沿いに下り、国道191号へ合流する予定だ。
車では、はるか昔に通ったことはあるが、自転車では初めて。
実に楽しみだ。


戸河内の街を過ぎ、橋を渡ると上りが始まる。
渓流を横目に、結構な斜度の上りが続く。
ガーミンが斜度10%以上を示す。
足だけは付かないように、ゆっくりと慎重にペダルを回す。
速度は当然10キロ以下。
というか6~7キロ。
遅いと何が起きるか。
虫が寄ってくるのである。
顔の回りを、目つぶしくんが飛び回るのである。
手を振り回して、追い払おうとするが、まったくひるんではくれない。
いつも思うのだが、奴らは何が目的なのだろうか。
やっぱ吸血なのかな~。
アブの季節は過ぎていたのが幸いだった。
奴らに刺されると痛いし、腫れるしとろくなことがないからね。
しばらくは奴らとのバトルが続いた。


道路脇には渓流がある。
落差が大きいので、滝やら落ち込みばっかりである。
しばらく上る。


谷筋が終わり、大きなカーブに差し掛かった。
木が伐採してあり、見通しがいい。


て、まだ恐羅漢山まで7キロ以上もあるのか。
山肌を巻くようにして上っていく。
次第に景色が開けてきた。


稜線が近づいてきたのか。
風が涼しい。
目つぶしも姿を消した。
斜度も気持ち緩やかになったかな。


そしていくつ目かの右カーブを曲がった先に。
やつが見えた。
黒っぽい獣。
四つん這いで、ずんぐりとした体型だ。
一見大きな犬。
でもがっしりしている。
猪とは体型が違う。
熊か!


こちらには気付いていないようだ。
いったん自転車をくるりと引き返す。
一息ついて、スマホを取り出し、カメラモードにする。
意を決し、再び進み始める。
熊が見えた。
と、思ったら熊もわしに気付いたのか、きびすを返して、向こうにダッシュ。
ガードレールの下をくぐって、木々の中に紛れてしまった。
しばらくはガサガサという音が聞こえていたが、やがて消えた。


かろうじて2枚シャッターを切ったか。
そのうちの1枚がこれ。


アップにすると熊と分かってもらえるかな?
足の裏の肉球がくっきりと見える。


もう1枚には写ってないか。


しかし驚いた。
今まで、西中国山地を渓流釣りやらキャンプやらサイクリングやらでウロウロしてきたけど、熊には初めて出遭った。
車と違って、自転車は走行音が小さいので、相手に気付かれにくかったのか。
理由はわからないけど、実に得難い体験だった。


その後は内黒峠を無事越えた。
後ろからバイクが一台抜いていったけど、何も見なかったのだろうね。



下っていく。
半袖なので、むっちゃ涼しい。
山の中を甘く見ていました。


と、進行方向に恐羅漢山のゲレンデが見える。
どこまでも深い森の中に、突如現れる人工的な風景。
勝手なんだけど、なんか安心できる風景だな。


荒れた道を下っていくと、恐羅漢山への分かれに出る。
スキー場の車庫がある。
だが、ここまで来たら満足したので右折する。



ここからは基本2車線の走りやすい道路が続く。
遠回りになるけど、冬場のスキー場へは絶対こっちの道が楽だわ~~。
断言できる。


というか十数年以上前に走った時は、この辺りダートだったような気もするのだが。
当時はどうやったんだろ?


道を下っていく。
川沿いからちょっと離れる。


こんな辺鄙な場所にトンネルが現れた。
横川トンネルというらしい。
長さは900メートル以上あるとか。
ただでさえ涼しいのにトンネルに入ると一段、涼しかった。


トンネルを抜けてからは再び上り。
餅ノ木峠(770メートル)を越える。

しばらく下ると、三段峡の上流に当たる柴木川に出合う。
観光用なのか、この谷は滝や渕の名前を示す看板がやたらと多い。
夫婦淵やら夫婦滝やら名前が付いている。


だらだらと上がっていく。
小腹が減ってきたので、補給食をmgmgしながら上る。
ようやく国道191号に合流。
見慣れた風景に出合うと安心した。


ここからはいつもの道を戸河内方面へ。
途中、深入山を眺めた。


虫の木峠からは一気のダウンヒル。
5時半には戸河内の道の駅に戻ったのだった。
わずか3時間50キロのライドだったけど、秋の訪れと熊に遭遇するという得難い体験をした一日だった。

(おわり)

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